「中翼」
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小  虎 師匠、ちょいと相談したいことがあるんですが。

どん兵衛 なんだい、あらたまって。また、できのわるいオチでも考えたかい?

小  虎 あたた、そんなんじゃあなくてね、師匠は、いつも「国民投票オール×」って言ってますが「アメリカに守ってもらってんだから、日本も勝手なことは言えないよ」っていうヤツ、そういう手合いに、どうやって教えてやったらいいですかね。

どん兵衛 甘ったれんじゃナア〜イ!

小  虎 ひゃっ、ひゃあ〜、なんですか急にでかい声ださないでください!急須がひっくりがえる、ねこは外へ飛び出す、犬が吠えはじめるわ……師匠、大丈夫ですか?

どん兵衛 米軍が日本を守っている?そんなら、なんで、首都のすぐ隣りの横須賀に基地がある。なんで、米軍司令部が座間にある。回りじゅう住宅だらけの厚木のど真ん中でいつまで訓練をやる。守っているんじゃない。日本の首根っこを押さえているんだ。

小  虎 ほ−、首根っこ……。おいらもヘンだと思ってましたよ。いや、実は、うちのかかあが「アメリカは核の傘で日本を守っている」とかぬかしてましたんでね。おたふくガエルめ、だましやがって、はり倒してやる。

どん兵衛 なんだ、またケンカかい。まあ、戦争に出かけるモンの身になってよく考える、ってえことだ。自分の頭のハエも追えないようなアメリカの青年たちが、なんで日本やイラクまで出かけて、大怪我をしたり、殺されたりしなくてはならないんだい?いや、いや、彼らはイラク人を殺しに遠くまでいくんだよ。行く先々にイラク人の死人の山だよ?何十万人の……。どうしてだい。

小  虎 ブッシュのヤローに命令されたから……ですよね?

どん兵衛 そう、軍隊は、よくできた会社ですよ。上から下まで命令。規則違反には監獄も用意してある。米軍だって自衛隊だって、軍隊ってのは、ひとつの商売。兵隊さんは会社を守っているんだよ。「日本国民を守る」なんて「おためごかし」のウソっぱち。「核とドル」の傘の下は自分のシマやショバさ。おまえさんや、おまえさんとこのおたふくガエル、あ、いや、フジ子さんは守らないよ。どんなに派手な夫婦ゲンカやったって自衛隊は出動しないから、覚えておいで。

小  虎 ふん、ふん。なるほど。簡単な理屈ですね。どうして、こんな簡単な理屈がわからねえんだ。ぶったたいてやる。

どん兵衛 また、それだ。性根がなおってないねえ。

小  虎 お言葉ですが、師匠、うちのおたふくだって有権者だ。あいつが国民投票で×つけなけりゃあ、憲法九条はお陀仏になりますよ。

どん兵衛 よし、よし、わかった。おまえさんが熱心に毒まんじゅうチラシを撒いてくれているってえ話は聞いているよ。うれしいじゃないか。で、聞くが、おまえさんは、毒まんじゅうチラシをどこでだれにまいたらいいと、お考えかね。

小  虎 戦争屋にだまされたバカどもにでさあ。

どん兵衛 バカどもとはごあいさつだな。庶民というのはねえ、悲しいもんで、ほんのいっときの熱狂、興奮、感動にまどわされて、だまされる。いったん、かかったマインドコントロールも、なるほど、やがては醒める。しかし、いつもだまされたと、気がつくのが遅い、気がついたときは遅い。厭戦庶民の会代表の信太さんは、十歳の時に学校でみた「日本人ここにあり」という映画で軍国少年になった。そのときのマインドコントロールから醒めるのに五十年かかった。そのかんに、特攻隊を志願し死にかけ、掃海艇に乗って死にかけ、ベトナム上空を飛ぶ米軍戦闘機とのニアミスで死にかけた。そして、ようやくもとの戦争大嫌いの信太少年はよみがえったのだ。

小  虎 へ〜! 五十年ですか。地球を一周して右翼が筋金入りの左翼になったわけですね。

どん兵衛 だが、時間がない。五〇年はまてません。国民投票まであと三年しかないよ。だから、あたしはいつも口を酸っぱくして言ってるんだ。わすれちゃあいけない。国民投票オール×は、右翼でもない、左翼でもない、五〇〇〇万人の中翼に訴えることだよ。

小  虎 右翼でもない、左翼でもない、中翼……ですかい?

どん兵衛 毒まんじゅうチラシをひっくり返し、とっくり返し、よーく眺めてごらん。国民投票の投票用紙と短い解説だけだよ。ほとんどが、憲法改正案の条文で埋まっているだろう。そして、その上に大きな「×」マーク。国民投票は、何でもいいから全部「×」!

小  虎 だまされるな!毒まんじゅうを喰うな!ですね。

どん兵衛 そう、それを必死で訴えているんだよ。中翼ってのは、だまされかかっている人、今、目覚めようとしている人のことだよ。バカどころか、修行が足りない左翼よりずっとずっと、マシさ。いったん、だまされて、「軍隊は日本を守っている」とか「安保のおかげで日本は繁栄した」とかいう妄想にとりつかれた庶民は、おまえさんがどんなに立派な説教をしたって、手におえないよ。いったん、だまされたものは、魂に触れる体験をして、深い後悔にいきついて、自分から目覚める道しかない。洗脳された庶民を相手に、知ったかぶって、説教の上塗りをやる必要はない。しかし、中翼は、目を覚まそうとしている。だまされたくないという気持ちがある。軽く、しかし、しっかりと、揺すってやるだけでいいんだ。

小  虎 ふん、ふん。国民投票オール×「実践編」ってとこですね。ひっぱたくんじゃなくて、軽く、しかし、しっかりと揺するわけですね。

どん兵衛 国民投票は、おかしい、へんだ、あやしい、そう感じてくれる庶民、だまされない庶民をふやすこと、ここが肝心だ。毒まんじゅうチラシを見て、何から何までわからなくてもいい。わかるわけもない。だまされない、ということは、自分の頭で考えるということだ。戦争はなぜ起こるか、軍隊はなぜあるのか、そういうことは考えてもらうんだ。必要なら高岩仁さんの「戦争案内」や厭戦庶民の会発行のドロボー経済学「アメリカのドルはなぜ強いか」などを読んで勉強してもらえばいい。教えるんじゃあない!中翼が政治に無関心なのは、修行の足りない左翼がいけない。中翼をほったらかしだから、それだけだよ。

小  虎 目を覚ましかけてる中翼、だまされかけている中翼かあ、そういえば、そんなヤツらがずいぶんいるような気がしますねえ。

どん兵衛 改憲派は一千億円をこえる大金をマスコミにつぎ込んで「自主憲法を制定しましょう」ってな宣伝をやろうとしているよ。中翼は、いやがおうでも、政治に巻き込まれて投票所に行く。洗脳されてしまった庶民に向かって、えらそうに説教したり、調子をあわせたりで、何かやってるつもりになるんじゃあないよ。中翼をほったらかしにしてる口先左翼は、おととい、きやがれ!戦争屋のウソも平和屋のウソもいらない。庶民は、だまされてばかりでうんざりだ。自分の頭でよ〜く考え、自分自身で承知したこと、だまされてた自分が目覚めたときの体験をもっと熱く語れ。ひとの口真似はもう卒業だよ。戦争はダメ、軍隊は無用、そこんところを、自分の口があるんだろう。噺家は自分の言葉をみがくんだ。さあ、ぐずぐずせずに、高座にあがって、やってごらん。

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 え?おまえさん。おまえさん。おまえさんたらっ!いつまで寝てるんだい。一杯ひっかけちゃあ、昼間っから寝ちまって、たいへんだよ。おきておくれよ。

 国会で、国民投票法案が通ったって言ってるんだよ。おまえさん!


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